スキップしてメイン コンテンツに移動

「お互いサマー」制作日記 Day 5〜8 キーを探し求めた夏の夜

Day 5 (7/27 Thu)

この日は午前中は歌詞を完成させてその後Day3で仮録音したギターに合わせて歌を仮録音し、余力があればそのままスタジオでギターの本番レコーディングをする予定だった。


歌詞制作は家でやれば良かったが、家には居たくなかったのでチャリで15分の公園でやることにした。この公園の近くには歌の練習に適した工場地帯があり、歌詞を作ったあとそこで練習するつもりだった。スタジオ方面ではなかったが、逆方面でもなかった。


複数の予定がある時に「一旦家に帰る」という思考回路にならず、一度に全てをやらなくては気が済まない性質のオレは歌詞制作と練習、スタジオ行きの全てが出来るようにこの場所を選んだ。


猛暑日で、地区センで歌詞作りをやることも考えたが風がかなり強めで気持ち良かったので公園でやることにした。毎度のことながら鳩がしらじらしく寄ってきたり白昼堂々と交尾をしたりしていたが鳩の観察もたいがい飽きたし、昔はてんとう虫や鳩の世ックスに嫉妬していたが今となってはどうでもいいことだった。


歌詞作りは順調に進んで昼過ぎには完成したが、昼飯を買いに行く時に金が無いことに気づいた。


7月は夏服を買ったりゴキ、ダニ、蚊対策用品や湿気取りを買ったりチャリのパンクを治したりと細々とした出費が嵩んでいた。いつも家で夜飯を食べるのも虚しくなって飲み屋や飲食店を利用することも多くなっていた。暑くなったため、飲み物代も地味に痛かった (自販では買わずにまいばすけっとで600mlの麦茶を買うようになり、最終的には水筒を持ち歩くことになった)。夏になると無性にビールが飲みたくなって買ってしまうのも結構デカい。何よりタバコ代が馬鹿げている。さらに「これで最後だ」と言い聞かせながら出会い系なんぞに課金してしまった。マイナポイント第二弾に一時救われたがそれも底をついてきた。


手元にはデビットカードが1枚と、Suicaカード、PayPayアプリがあったが残金がほとんどなく、昼飯とタバコを買うのが限界だった。ゆうちょ銀行にはまだ少しあったがキャッシュカードを持ってきてなかった。アプリで振り込めるようにするには本人確認書類が必要だったしめんどくさかった。


そんなわけでスタジオに行くことはあきらめ、歌の練習だけすることにした。しかし金があってもこの猛暑の中チャリで30分ちょっとかかるスタジオまで行く気にはなれなかった。


工場地帯のちょっと寂れた辺りまで移動して暗くなるまで歌の練習をした。

Day 6 (7/28 Fri)

スタジオでギターの本番録りをするために近所の公園で練習と仮録音をした。Day3で録ったやつはコードの全ての音を一発録りしたものだったので、コードの低音と高音を別々に録った。一部、低中高の3つに分けた。


歌詞主体のシンプルな曲だったから凝ったアレンジは必要なかった。季節物の曲だから余計なことはせずにパパっと仕上げたかった。


猛暑だったがこの日も風が強くて湿度も低めで清々しかったが風通しのいい日陰に限った話で、この炎天下でスタジオまで30分ほどチャリを走らせるのはしんどかったため、いつもは15時か16時で予約していたのを17時に変えて予約した。


しかしスタジオに向かっていた16時台でも日差しは強烈どころか西日が一番きつい時間帯で、18時にしておけばよかったと少し後悔した(スタジオは西側にあった)。氷を入れた水筒が大活躍した。


いつも通りクズなくせに良い子ぶってスタジオの店員さんに挨拶をし、2時間でギターを録音した。


金曜だったし時々利用するスタジオ近くの居酒屋に行きたかったが金がなかったし、まだギターしか録れてないから歌も録ってからレコーディング完了祝いに飲みに行こうと思ってこの日は辞退した。居酒屋でライブをする妄想にふけっていたが、人が苦手で嫌いだから実現することはなかった。


とにかく早く完成させたかったし、昨日仮録音出来なかった部分の歌を吹き込みたかったから家には帰らずにそのまま工場地帯へ行き、挙動不審に辺りをキョロキョロ見渡しながら21時半まで歌っていた。なぜ世界中でたった一人オレだけがこんなにも周りが気になったり鳥みたいに警戒心が強くてキョドってしまうのだろうかと、世界に対する拒絶感と憎悪が高まった。


金が無いから夜飯は例によって納豆ご飯で済ませ、さすがに疲れたから早く寝た。


Day 7 (7/29 Sat)

朝起きて音楽を聴こうとしたらイヤホンの片方からしか音が出なかった。原因はイヤホンではなくLightning  ステレオミニの変換アダプタにあった。ELECOM製のやつで、半年〜1年くらい家でも外でも酷使しまくっていたがついに壊れてしまった。よりによって今かよと思いながら渋々徒歩圏内にある家電屋に行って同じ物を買った。仰向けの姿勢でiPhoneを胸の上に立てて操作するのが一番ダメージを与えた要因だろう。コネクタを上部またはサイドに付けてほしいものだ。本体を逆さにして180度回転するアプリもあるが、Safariですら少なくともiPhone8では回転しない。今実験したらChromeは回転したから一瞬Chromeをメインにすることも考えたがやっぱりSafariのほうが使いやすいし純正なだけに更新も早いからやめた。



昨日スタジオに行った時に今日の予約はしてあった。暑いから夜間が良かったが土曜で混んでたため16時になった。スタジオ行く前に練習しようかとも思ったが、この日も猛暑で家に居たかったし、喉(のど)を酷使して潰してしまうことを懸念していた。タバコも控えていた。


昼の間は掃除したり、歌を合わせるために昨日録ったギターを編集していたが、相変わらず時間配分能力がまるでダメで、時間ギリギリまで編集していた。「女優ビッグバン」の時の失敗から、ボーカル用のガイドラインをピアノの音で作っておくつもりだったがその時間はなかった。(そして後述の通りまたキーを外してしまった)


猛暑の中チャリを走らせた。無性に炭酸が飲みたくなり、テンションを上げる目的も兼ねてスタジオ近くのコンビニでスミノフ・アイスを買った。元気な曲とは裏腹に、最近は気分が沈んでたり自殺衝動に駆られることが多く、この日も「オレなんでこんなことしてるんだろ」みたいな感じでボーッとしていたが酒を入れて無理矢理やる気を出した。正直音楽なんかより彼女を作りたかったが、制作に集中するため出会い系は退会した。


レコーディングには思いのほか時間がかかるのは今までの経験から分かっていた。特に歌はテイク数を重ねる必要があった。ポップガードも使わずにiPhoneを手に持って録音してたため、「ボフッ」という空気音が入るミスが多かった。iPhone用のポップガードを自作する必要がある。


2時間で予約していたが案の定半分くらいしか終わらなかったので1時間延長することにした。最初から3時間予約することも考えたが、長時間歌うことで喉の調子が悪くなる可能性があったからそれはやめた。


一つ一つのパートにテイク数をかけすぎたのが今回の失敗だった。当初は曲の4番まで全て録るつもりだったが編集の時間も考えると諦めざるを得ず、今年は2番までで妥協しようと考えた。3時間で大部分は録れたが、全部は録れなかった。腹も減ってたし今日はもういいやと思い、切り上げた。


この日も飲みに行く気にはなれなかった。金も無かったが、金があったとしても行かなかっただろう。レコーディングも中途半端だったし、何より店に行ってもいつもオレだけひとりぼっちなことにもう耐えられないでいた。


途方もない虚しさに駆られながら帰路についた。


土日はいつもカレーを作ってるがウィンナーと目玉焼きを焼いてタバスコをかけまくって食べた。


はやく曲を完成させたかったのでさっそくボーカルパートの編集に取り掛かったが、「競い合い お互いサマ〜」の部分のキーが合ってないことに気づいた。ラフ録りの時点では気づかなかったが、ギターの低音と高音を分けて綺麗に録ることによって一発録りでは隠れがちな中域音が聴こえるようになり、その音とボーカルのキーが合っていなかった。特にハモリのパートに違和感があった。


このセクションは「季節外れのハロウィンパーリー」の前と後にあるが、後ろの方はごく普通のマイナーコードだから音も合わせやすく、歌が少し低めになっても違和感は少なかったが、前の方はメジャーとマイナーの中間みたいな変則的コードにした(Aメロのあとでいきなり悲しげなマイナーにすると微妙に不自然だった)ため違和感が目立った。


ギターのチューニングまたはポジションを間違えたのかとも思ったがそうではなかった。ピアノの音でメロディラインを打ち込んだところ、ボーカルが3分の1音くらい低かった。疲れていたがこの問題が気になってしょうがなかったので車通りが多いが歩道の人通りは少ない国道まで行ってピアノの音に合わせて歌ったところ、一応少しは直ったが車の音がうるさくて聞こえずらいのでまた翌日作業することにした。


Day 8 (7/30 Sun)

猛暑日。キーの問題を修正するために水筒持って工場地帯へ行ってピアノのガイドを聴きながら歌を吹き込んだ。


メインパートの方はほぼ問題なかった(キーをつかみづらく、正式リリース版でも微妙に低くなっているが)。問題はハモリの方で、何度やっても合わず、最終的に別のパターンを作ったがまだ違和感は残っていた。


スタジオに行って録り直すことも考えたが、3日連チャンで猛暑の中スタジオまで行く気にはなれなかった。バスや電車は交通費かかるから使いたく無かった。


いっそのことコード進行自体を変えてしまおうと思い、いったん家に帰ってギターを取ってきて近くの公園で編曲を試みたがいまいちいいアイデアが浮かばなかったがとりあえず適当に妥協した形で作った。人が多かったから歌を乗せるためにまた工場地帯へ向かった。


歌をのせたがいまいちパッとせず、歌詞を変更するのもめんどうだったので結局元のコードを採用することにし、ハモリパートを変えることにした。(正式版と前の記事に貼ったデモ版を比べると違いが分かる)


気づくと日も落ちてきて蚊も出てきたので帰宅した。


つづく


🏷️ お互いサマー  音楽制作  ギター  レコーディング  スタジオ

このエントリーをはてなブックマークに追加
Keywords
Pick Up
©Hiro Kinohara